取り返しのつかないことになってしまった!
あのとき○○すればよかったのに・・・
なぜ、○○しなかったんだろう?
という経験をされた方、多いのではないでしょうか?
「取り返しのつかないこと」の原因は、
1 ○○すべきことを知らなかったから。
2 先送りしたから(そして、忘れてしまった・・・)
が多いとおもいます。
特許相談においても「取り返しのつかないこと」がときどき出現します。
※ここ1~2か月の間、弊所の特許相談にて頻発したため、こちらのブログにも掲載します。
お客様:○△について特許出願をしようと思っています。こちらが、試作です。
かめやま:これは、量産試作ですか?
お客様:そうです。
かめやま:なるほど。この特徴はどんなところでしょうか?
お客様: 従来品にはない切れ味!これが、この商品のウリでして・・・ここについて特許を取りたいのです。
かめやま:どうして特許を取られようと思ったのですか?
お客様: 実は、弊所のお客様に見せたところ、「切れ味」をすごく気に入ってくれまして。この様子だと、それなりの売れ行きも見込めそうです。
しかも、見る人が見れば「切れ味」の構造はすぐにわかってしまいますし・・・それで、特許を取ろうと思いました。
かめやま:なるほど。一番最初にお客様に見せたのは、いつですか?
お客様: ちょうど10か月前です。
かめやま:お、ちょっと時間がないですね・・・出願まで急がないと、いけないです。
お客様: え、どういうことですか?
と、こんなことが、弊所の特許相談で続きました。
「急がないといけない理由」はどこにあるのでしょうか?
今の流れをまとめると・・・
STEP1 新商品(量産試作)をお客様に見せる
STEP2 新商品に対する好感触をつかむ。
STEP3 (結構売れそうなので)特許出願しておこう
ところが、特許の審査では
→ハサミの発明(切れ味に関する発明)は、特許出願前に、公開されている。
→審査において、特許出願の発明は、特許出願前に公表された発明と同一
→特許出願の発明は、新規性なし(特許は取れない。)
と扱われてしまいます。
売れ行きをみる前に、出願の意思決定をしないといけないの?
と思われるかもしれません。
お気持ちはわかります・・・が、そういうルールなので。
もちろん。
「公表前の出願」が現実的ではないよね!
という場合もあるので・・・そんな方のために
最初の公表後、1年以内に出願すればOK
という救済規定(新規性喪失の例外)もあります。
こちらであれば、1年という時間的な縛りがあるものの
売れ行きをみてから、出願の意思決定も可能
となります。
・・・が、ここが落とし穴。
救済措置があるから、大丈夫!
と思われるかもしれません。
しかし、1年ってすぐに経ってしまいます。
本当にアッというまです。
実際
出願の期限まであと2週間しかない!
という場合もあれば
出願の期限がすぎてしまった!
という場合も少なくなく・・・
期限管理って、自社で行うのは結構難しいんですよね。
ところが、前もって特許事務所に相談していただけると、
新規性を維持しながら、PRする方法をアドバイスしたり・・・
または、
上記のPR方法が採用できない場合には、
「最初の発表(PR開始)からそろそろ10か月経ちますよ~」と事前通知したり・・・
することもあります。
いずれにしても、期限が過ぎる前であれば打つ手はイロイロあるのですが、実際は、期限が過ぎてしまい「あとの祭り」が多く・・・
これでは、折角のチャンスを逃したことになってしまいます。
つまり
発明が秘密から脱してしまうこと
期限が過ぎてしまうこと
これらは、元に戻せません。
覆水盆に返らず・・・ということなのです。
まとめ
1 発明Aについて特許を取るためには、少なくとも、新規性が必要
2 新規性:出願時点において、発明Aが秘密であること
3 新規性喪失後1年以内の出願であれば、救済されること
4 期限管理は、結構難しいこと(1年は、アッという間)
5 新規性喪失も、期限徒過も、元に戻せないこと
出願の意思決定のために試験販売したいな~
という場合も、試験販売前にご相談いただければ・・・と思います。
※救済規定(新規性喪失の例外)について補足
日本と同様に扱ってくれない国(中国や欧州等)もあるので、
海外進出したい方は、「発表前の出願」を厳守されたく・・・
何かのご参考になれば幸いです。
かめやま特許商標事務所
弁理士 亀山 夏樹