その1では、法人の名称を考えるにあたって
以下A~Dの観点で検討することがおおいのですが
今回は諸事情につき、Dの優先度を下げ、A~Cの3点で検討しました。
A 経営理念
B 商号
C 商標
D 商売の内容を示唆する名前
そして、A~Cを分解すると、
A1 経営理念に沿っているか
A2 お客様に理念が伝わるか
A3 社員に理念が伝わるか
A4 協力会社に理念が伝わるか
B1 名前を会社名として使用できるか(商号の問題)
C1 名前を商標として使用できるか(商標の問題)
C2 同じ商標を先行使用されている企業があるか?
ある場合は、そのイメージ(特に悪い方)を引きづらないか?
以上が、その1の内容です。
その2では、上記のB1とC1について、補足です。
つまり、商号と商標の問題。
あるある、かつ、複雑な問題です。
例を出すと・・・
「株式会社ABC」。これは商号です。
商号ですが、商標としても機能します(表示の仕方によっては・・・(※))。
一方、商標の世界では、
商標登録できる場合もあれば、商標登録できない場合もあります。(※)
(※)法律上、専門的な話で、厳密に書くと複雑になりがちで。
ブログでちょいちょいと書ける技術を持ち合わせておりませんので、割愛します。
一方の「ABC」。
こちらは、商号「株式会社ABC」の株式会社を省略した形。
こちらは商号ではなく、商号の略称。
表示の仕方によっては、商標として機能します・・・
で。
ご商売の目印(商標)として「株式会社ABC」と「ABC」のどちらがよいのか?
その正解はわかりません。
しかし、実際問題として、商号(株式会社ABC)ではなく、
商号の株式会社を省略した「ABC」を使う場合が多いのではないでしょうか?
(商標登録を受ける都合、4条1項8号を考慮して・・・かもしれません。ここに触れると専門的になってしまうのでココでは割愛します)
特に、店舗ビジネスにおける店舗名やネットショップにおけるサイト名は、ほとんどそうなのでは?と思います。
ここで、何が問題になるかといいますと。
例えば、レストラン業を営む以下の会社を設立しようとする場合
商号 株式会社ABC
看板やサイト名の表示(商標) ABC (商号の略称)
役務(サービス名) レストラン
他人が、役務レストランについて名称ABCの商標権を既に持っていると・・・
自社の名称ABCを使用したレストラン業の行為は商標権侵害となります。
結果、ご商売の目印としての表示(商標的な表示)ABCは、レストラン名として使用できなくなり、店舗名やサイト名の変更をしなければならない・・・
先日も、某経営者とお話ししていたのですが、
「商号登記していたから商標登録は不要なのでは?」とおっしゃっていたのですが、
どうやら、商号と商標とが入り混じっているようです・・・あるあるです。
弊所もこれから、法人を設立するわけですが、
弊所の新しい会社の商号「株式会社○○○」に関し、
○○〇について商標登録の有無についてはチェック済み。
つまり、○○〇の商標としての使用は可能。
ただし、現時点において使用可能であって、今後、他人が 商標登録出願を先に行った場合は・・・別です。
商標の世界が先願主義のルールを取っているからです。
あとは、商号調査で問題がなければ、商号「株式会社○○○」の使用は可能となる。
残るは、「株式会社○○○」又は「○○○」で商標登録するか否か?
となります。
商売の目印と表示するのであれば、(慣習にならって?)後者としたく・・・
そうすると、
今後、商売の目印としての表示(商標的な表示)として「○○○」を使い続けたい
自分よりも先に他人が ○○〇について商標登録を受けることができないようにしたい
(すなわち、自社の名称○○○の使用について水路確保したい)
と意思決定した場合は、商標登録出願を速攻でします(もちろん、銀行印等の作成もお忘れなく)
一方、
社名やサービス名を外部に表示しない
と意思決定した場合、商標登録出願はしない(先送り)という考えもアリだろうと思います。
弊所の場合、法人設立の意図は、
社員を雇うところにあり・・・
社員のモチベーション維持の観点から、社名の外部表示は必要なんじゃないか?
と考えています。なので、商号の略称についての商標登録は行う予定です。
気になる弊所の法人名ですが、商標登録出願が済むまではナイショです。
弊所の新しい会社の商号「株式会社○○○」は、司法書士さん以外には漏らしません。
その理由は次の通りです。
商標の世界が、出願を先にしたもの勝ち(先願主義)のルールを採用しています。
仮に、出願前に商号「株式会社○○○」を公表すると、「○○○」を第三者に先取りされるおそれもあり・・・
そうすると、こちらで「○○○」を商標として使えなくなってしまいます。
もちろん、その場合は「○○○」の使用をあきらめて、別の名前を使用することもできますが、
折角決めたのに、使えないという状況は、できる限り避けたいところであります。
なので、商号の調査によって使用の目途が立てば速攻出願となります。
少し前の話ですが、PPAPのように、公表当初は流行っておらず、
その後に大ヒットしてしまった場合には、
ヒットの瞬間に出願が望ましいですが、その特定は難しく・・・
市場の反応を見ながら、可及的速やかに!としかいえません。
(商標が、先願主義なので)
法人設立時、商号の知的財産マネジメント・・・
専門家自身も、結構気を使います。
まとめ
【法人設立】会社の名前決めの際にチェックしたいところ その2
1 商標と商号
全く別物。差し止めの効力(第三者からの看板の使用禁止)を考えると、
商標権の効力は軽視できない。
2 商売の目印として使用する名前
こちらは、商標(商号であっても商号の略称であっても)
3 商標登録の分水嶺
名前を商売の目印(商標)として使い続けたいか否か
(∵ 第三者に横取りされてしまいますからね)
4 社名の公表タイミング 事前対応編
名前を商売の目印(商標)として使い続けたいのであれば、社名の公表は出願後。
(∵ 公表行為によって第三者に先取りされるリスクが生まれるので)
5 社名の公表タイミング 事後対応編
出願せずに社名を公表した場合、出願タイミングは市場の反応を見て可及的速やかに
(∵ 公表され、かつブレイクした名前は、第三者に先取りされるリスクが高いので)
※このリスクを封じるには、公表前の出願となります。
※先日のTV番組によれば、
馬名「ソダネー」の競走馬が登録されたとのこと。
チバニアン同様、こちらも商標登録が集中するかも・・・関係者でグッズ販売される方は要注意です。
何かの参考になれば幸いです。