先日、Yahooニュースでこのような記事を見かけました。
ワタミ「改名」で復調 業態転換が奏功 屋号隠し批判も
「屋号の改名」=「屋号隠し」
としたくなる気持ちも分かりますが、そんなに簡単な問題ではないと思います。
以下、記事本文
居酒屋チェーンのワタミの業績が回復している。平成20年に新入社員が過労自殺した事件をきっかけに「ブラック企業」のイメージが定着し、客離れを起こしていたが、総合居酒屋の「和民」や「わたみん家」を新業態の「ミライザカ」や「三代目鳥メロ」に転換し、復調している。(黄金崎元)
(中略)
◆低価格に手応え
要因は新業態への転換が大きい。低価格居酒屋が消費者に受け入れられており、ワタミも上期に和民など32店舗をみちのく清流若鶏唐揚げを提供するミライザカに、わたみん家など44店舗をタレの焼き鳥・串揚げの鳥メロに、それぞれ業態転換させた。
ミライザカは転換全店累計売上高が前年同期比33・3%増、鳥メロは45・1%増を記録した。今年度中に和民やわたみん家の100店舗を新業態に転換する。清水社長は「ミライザカと鳥メロの業績が好調で、そちらに注力する」と述べており、来年度以降も新業態を増やす方針だ。
また、和民やわたみん家も、これまでの高価格路線を見直した効果で上期累計客数は前年比0・5%増とプラスで復調傾向にある。同社は12月の忘年会シーズンの客足次第で、29年3月期連結の営業損益は1億円の黒字に転じると予想する。
◆「隠していない」
ワタミの業績回復に関し、一部の経済ニュース番組が「ワタミ隠し」の影響が大きいと報じた。新業態の屋号に「ワタミ」という文字がないため、ワタミグループと知らずにお客さんが入っていると伝えた。一方、この報道に対して「新業態への転換が消費者に受けたのでは」「イメージが悪いのだから屋号にワタミを入れないのは企業として当然だ」との声もある。
ワタミ広報は、ワタミ隠しで業績が回復していると指摘されている点について「さまざまな意見があることは承知している」とした上で、新業態の屋号については「ワタミという文字を意図的に隠しているわけではない」と回答した。
ワタミは長年にわたり、過重労働による新入社員の自殺や賃金未払いなどの問題を起こし、ブラック企業と批判されてきた。27年に社長に就任した清水氏は「世間のブラック企業との批判を真正面から受け止める必要がある」とし、今年には労働組合を発足させるなど、企業体質や労働環境の改善に取り組んでいる。
記事本文、ここまで
イメージチェンジのための「改名」は、ワタミに限られず、よくあることだと思います。
例えば、
ターゲットの変更(女性向け から 男性向け )
価格層の変更(高級 から 普段使い・低価格)
等。
今回のワタミのケースにおいて、
仮に、新しい屋号にワタミの文字が入っていると、
新しい屋号をみたお客様は、
ワタミ系列の新しい飲食店だ!
とワタミに対する特定のイメージが新しい屋号にも伝染してしまいます(良くも悪くも)。
一方、新しい屋号にワタミの文字が入っていない場合と、
お!新しい飲食店だ!
こういった感じで、ワタミのイメージが付随しない新屋号のほうが消費者に選択されやすい、といえそうです。
つまり、短期的にみれば、屋号改名による効果は、それなりに見込めそうです。
しかし、中身が、従来と同じままでは、改名の効果は継続できず・・・
長期的に見れば、繰り返し・・・となります。
一方、企業の体制が改善されていれば、
改善後のイメージが消費者等に浸透し、そのイメージが新しい名前に定着する。その結果、新しいブランドが生まれる
こういった流れになると思います。
改名が、単なる屋号隠しであるかどうかは、
改善の中身(記事にあるような、企業体質や労働環境の改善等)を見ないとわかりませんし、改善の実効性に関しては、それなりの長い時間が必要かと思います。
が、消費者の立場からすれば、お店選びの際、屋号だけで判断せずに、企業名を確認しようとする流れは良いと思います。
何かのご参考になれば幸いです。
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かめやま特許商標事務所
弁理士 亀山 夏樹