弊所は、中小企業200社以上の相談実績があります。
これまでのお客様の相談内容を振り返りながら、
中小企業にとって特許出願が必要な場合について述べたいと思います。
1.他社による模倣防止
特許出願が必要な場合。
すぐに思いつくのは、自社商品の模倣を防止したい場合です。
売れる自社商品は、他社も関心をもっています。
特に、その商品の利益率が高い場合は、なおのことです。
このため、「売れそうだな」「売れる」と思った場合には、
販売前に特許出願をする場合が多いです。
特に、インターネットにて販売する場合には、
その商品を多くの人が見るため、模倣されるリスクも高くなります。
しかし、特許出願が必要な場合はこれだけではありません。
弊所のお客様の例を挙げて説明したいと思います。
2.協力会社からの要請
よくあるケースは、自社商品の販売(の一部)を他社に委託する場合です。
委託先からみれば、
「売れそうだな」と思った商品であれば、
自社だけが独占して販売したい
はず。
つまり、模倣品が出ては困るのです。
そこで、
委託先は、委託元(製造元)に特許を取るように打診します。
仮に、委託元(製造元)が特許を出すことを渋った場合には、
「特許を受ける権利」を製造元から譲り受けた上で
委託先が単独で特許出願を出す場合もあります。
弊所のお客様の場合、
販売委託先から
この商品については、
貴社が特許を出さないのであれば、ぜひ、わが社で特許を出してもよいか?
という打診がありました。
しかし、
このまま、相手方に特許を出させてしまうと、
この商品が売れた場の利益はあまり得られないだろう・・・
ということで、お客様の方で出願されました。
実は、このお客様。
過去にも似た経験がありましたが、
当時は、
まさか、特許を出すほど売れるものでもにないだろう
ということで、
相手の特許出願を無料で許可してしまいました(※)。
その後、予想に反して、その商品が売れてしまい、事業のチャンスを逃してしまいました。
※なお、「相手方に特許出願を無料で認める」くらいあれば、
「有料で売る」
「譲渡の代わりに、自社の実施権(ライセンス)を確保する」
という交渉カードを出しても良いと思います。
別のお客様の例としては、海外進出の際、
現地のパートナー企業から
「現地で、特許を取ってほしい」
「現地で、商標登録を取ってほしい」
と要請されたことを受けて、特許権や商標権を取得したこともありました。
3.技術ブランドの向上
どんなに素晴らしい技術であっても、
その技術が小さな企業や無名な企業のものの場合、
その技術に対する信用はなかなか得られない場合も多いです。
ところが、その技術について特許を取得しているとなると、
その会社の技術の独自性について国が認めたということになります。
このように、特許(国)の力を利用して、
自社の技術ブランドを高めることもできます。
さらに、その発明品が他社との共同開発の場合には、
共同開発の相手方の技術ブランドを利用して、
自社の技術ブランドの向上を図ることもできます。
共同開発の相手先としては、大学や大手企業が考えられますが、
中小企業の場合には、大学の方が多いようです。
4.中抜き(浮気)防止
とある企業のお話です。
取引先から試作の開発依頼が入り、納品しました。
試作納品の後の、量産依頼を期待したものの、その発注は来なかった。
しらべてみると、取引先が、別の会社に量産依頼を出してしまった・・・
こういった話もよくききます。
このような行為を防ぐために、
すなわち、
この行為に対してレッドカードを出せるようにするためには
どのようにすればよいでしょうか?
それは、自社の試作開発で得た技術に関し、
予め特許出願を済ませておくことです。
この特許出願に基づいて特許権が成立した場合には、
取引先がその開発品を製造販売する行為は特許権侵害となります。
特許権侵害のペナルティとしては、
製造や販売差し止めや損害賠償といった民事上のものもあれば、
懲役や罰金といった刑事上のものもあります。
また、「特許出願中」という表示により、
権利が成立した場合のペナルティを利用して、
取引先に対し牽制をかけることもできます。
このようにして、取引先は、無断で、開発品の製造販売をしにくくなります。
なお、開発の契約内容によっては、
開発した技術について特許出願を自由にできない場合がありますので、
専門家にご相談されたほうが良いと思います。
まとめ
中小企業にとって特許出願が必要なケースとしては、以下の4点があることをお伝えしました。
- 他社による模倣防止
- 協力会社からの要請
- 技術ブランドの向上
- 中抜き防止
特許出願の目的として、典型的な模倣防止以外にも3点あることを覚えていただければと思います。
皆様のご商売の参考になれば幸いです。