1.前回の記事の続き
前回の記事(文字商標の力)では、文字商標の方が、図形商標に比べて、以下のメリットがあると書きました。
- 商標に触れたお客様に対し、その意味を伝えることができる。
- その意味の理解を通して、お客様の心を刺激することができる。
- その意味の理解を通して、お客様に記憶してもらえることができる。
- お客様が記憶しているので、お客様は自分を探すことができる。
- 文字は、インターネット検索との相性がとても良い。
- 文字を上手に商標として使用することにより、「(お客様の)心が動きやすい商標」「(お客様が)覚えやすい商標」「(お客様が)探しやすい商標」になる。
今回は、売上に貢献するネーミング・商品名です。
2.ネーミング・商品名のはたらき(1)
「売上に貢献するネーミング・商品名」の前に、「ネーミング・商品名のはたらき」についてみてみましょう。
皆さんにとってなじみのある「ブランド」という言葉は、牛の焼印(やきいん)が語源になっているといわれています。
当時は、放牧した牛の中から自家の牛と他家の牛を取り間違えないよう、その家のマークの付いた「焼印」を押していたようです。
「ネーミング・商品名」も、まさにこの「焼印」と同じような機能を果たしています。
すなわち、「ネーミング・商品名のはたらき」の1つ目は、「自社商品と他社商品とを取り違えないようにするための目印」であるといえます。
3.ネーミング・商品名のはたらき(2)
「ネーミング・商品名のはたらき」の2つ目は、「信用の表示」です。
第1回目の記事(「ネーミングの前に知ってほしい」商標のこと)で出題したこの問題を覚えているでしょうか?
問題:①②のビールがあります。皆さんならどちらを買いますか?(値段は同じです)
① No Brand のビール ② ”KIRIN” Brand のビール
質問2では②を選んだ人が多いのではないでしょうか?
「知らない商品名」や「利用したことがない商品名」よりも、
「知っている商品名」や「利用したことがある商品名」の方が安心するのではないでしょうか?
このように、「ネーミング・商品名のはたらき」の2つ目は、「信用の表示」であることがわかります。
4.ネーミング・商品名の信用を高めるには?
「ネーミング・商品名」の信用を高めるためには、
「自社の商品を知ってもらう」ために、「自社の商品を利用してもらう」ために、いろいろな人に露出したほうが良いです。
しかし、「たくさん露出すれば、その分、信用が高まる」といえるでしょうか?
確かに、その商品やサービスを利用した結果、その商品やサービスが良かった場合には、良い印象が商品名等にくっつきます。
しかし、その商品やサービスを利用した結果、その商品やサービスが悪かった場合には、悪い印象が商品名等にくっついてしまうのではないでしょうか?
これをお客様の目線から見てみると・・・
良い商品名(あの商品は良かったから次も買いたい。だから商品名〇〇は覚えておこう)
悪い商品名(あのチェーン店は接客が悪かったので二度と行きたくない。だから店名「〇〇」は覚えておこう)
となりますよね。
つまり、「ネーミング・商品名」に信用を高めるためには、「ネーミング・商品名」の見せ方がとても大切になってきます。
例えば、近所で見かけた引っ越し作業において、
その引っ越し屋さんの作業員が、荷物を丁寧に取り扱ったり、立ち振る舞いが良かった場合、
「そのユニフォームに記載された社名を見て、この会社は教育が行き届いた会社なんだな」
「うちが引っ越しするならここに頼んでみようか?」
と思います。
逆に、引っ越し屋さんの作業員が、荷物を雑に取り扱ったり、立ち振る舞いが悪かった場合、
「そのユニフォームに記載された社名を見て、この会社は教育が行き届いていない会社なんだな」
「自分が引っ越しするなら、ここに絶対に頼まないほうがよいな」
と思いますよね。
5.商標は、売上の導線をつくるもの
先ほどの引っ越し屋さんの事例で考えると、
- ポジティブな印象をもつ商品名には、お客様が寄ってくる
- ネガティブな印象をもつ商品名には、お客様を寄りつかない
ということがわかります。
このように、「ネーミング・商品名」は、
「自社商品と他社商品とを取り違えないようにするための目印」でありながら、
「良い印象(信用)がたまる器」であって「悪い印象(不信感)がたまる器」であるといえます。
すなわち、「ネーミング・商品名のはたらき」をお客様目線からみてみると、
「ネーミング・商品名」は、出会いから購入までのお客様のコミュニケーション手段であることがわかります。
すなわち、良い「ネーミング・商品名」は、「売上までの顧客導線をつくるもの」といえます。
6.商標を守ることは、売上までの顧客導線を守ること
良い「ネーミング・商品名」は、「売上までの顧客導線をつくるもの」といいました。
だからこそ、良い「ネーミング・商品名」は、他社も利用したくなるのです。
しかし、どんなに良い印象や信用がついた「ネーミング・商品名」であっても、
他社がいい加減に利用してしまえば、悪い「ネーミング・商品名」となってしまいます。
自社が、事業活動を通して積み上げてきた信用を
他社に横取りされないようにするため、
そして、他社に傷つけられないようにするために
「ネーミング・商品名」の保護が必要になります。
この保護のために、商標登録が必要になってきます。
次は、「ビジネスにおける残念なネーミング・商品名」についてお話しします。
<次回予告>
- 第4回 ビジネスにおける残念なネーミング・商品名
- 第5回 「売上に貢献するネーミング・商品名(商標)」に潜む危険な罠
- 第6回 「売上に貢献するネーミング・商品名(商標)」を守る方法
- 第7回 ネーミングを決める際に気を付けたいこと
- 第8回 商標活用の事例紹介