特許制度において、権利を付与するために実体審査を行うか否かは、国によって考え方が異なります。こちらでは審査主義と無審査主義について解説いたします。
審査主義
出願書類などの形式的な審査と、発明に関する新規性や進歩性などの実体審査を経た後に、特許権を付与できるかどうかを審査する方法です。特許権を得るためには、特許庁の審査官による審査を受ける必要があるため、権利の成立までには一定の時間がかかります。
一方で、第三者である審査官によって権利の有効性が判断されているため、無効になる可能性が低く、安定した権利であるという利点があります。日本の特許法においては審査主義が採用されており、海外でも米国、中国、韓国、欧州などの多くの国々が特許制度で審査主義を採用しています。
無審査主義
権利発生要件の実体審査を行わず、登録を受けるために必要な基礎的要件を満たせば、特許権等の権利をを付与する方法のことです。早期権利保護のニーズに対応し、新規性や進歩性などの審査は行われません。現在では日本の実用新案制度が無審査主義を採用している他、スイスなどの諸外国でも、特許法で無審査主義を採用しています。
実体審査を行わないため早期に実用新案権を取得できますが、実用新案権を得るのに妥当ではない一般的な技術、すでに公知の技術(新しくない技術)に権利が付与されるケースもあります。
また、第三者への実用新案権の行使(差止請求や損害賠償請求等)するためには、成立した実用新案登録の考案に新規性・進歩性があるという立証が必要となります。権利の安定性という意味では、審査主義の下で成立した権利のほうがより安定しているといえるでしょう。